日本経済の中期トレンドは、少死高齢化

を背景として、厳しいと思われます。

 

一方、長期的な視点に立つと、今後成長が

確実である、インド太平洋地域の発展を

取り込む形で、明るいと考えられます。

 

本記事では、先ず日本経済の中期・長期

トレンドを概説します。

 

続いて、長期戦略として日本政府が取り

組んでいる「自由で開かれたインド

太平洋戦略」を説明した後、

 

上記施策を支える3つのキーワード

「人口が増え続ける」「所得の向上と

平準化」「都市への流入」を詳しく

解説します。

 

日本経済の中期トレンドと長期トレンド

中期トレンド

当面の日本経済にとっては、戦後最大級の

難局が立ちはだかっています。

 

アベノミクス相場をどう軟着陸させるかは、

これから数年間の最大の課題となって

きます。

 

また、過去半世紀にもわたって積み上げた、

日本政府の債務をどう処理していくかは、

2020年代の世界経済にとって最大級

といえる、大きなトピックとなるかも

しれません。

 

アベノミクスの「異次元緩和」によって、

政府債務の「長期金利」リスクの多くが、

日銀に移転されたこともあいまって、

債務問題のコントロールに失敗すれば、

 

政府か日銀かのどちらかがクラッシュ

して、巨大な「財政破綻危機」を起こし

かねなません。

 

すでに世界の金融界がこの問題で戦々恐々

として、日本政府や日銀の今後の政策的な

方向性を、固唾を飲んで見守るようにも

なっています。

 

長期トレンド

しかし、中期的には大混乱があり得た

としても、超長期的な日本経済の未来

には、「ほとんど確実」といえる明るい

材料があります

 

無論、「少子高齢化をどうするか」という

のは、極めて難しい課題なのは言うまでも

ありませんが、

 

安倍政権の施策によって希望の光が射して

おり、2050年頃までには改善される

可能性があります。

 

 

そしてそれ以上に2050年頃までには、

日本が属する「インド太平洋地域」全体に、

巨大な人とカネの流れが誕生することが、

 

「ほとんど確実」な未来として存在して

いますし、この地域の成長を日本経済に

取り込むという、

 

「自由で開かれたインド太平洋戦略」

成功すれば、日本経済はまた黄金期を

迎える可能性があります。

 

もちろん「世界第2位」といった極端な

黄金期は、もう来ない可能性が高い

思われますし、そのこと自体にもほとんど

意味がありません。

 

次の「黄金期」はインド太平洋全体の人々が、

みんな同じように豊かに幸せに暮らすなかで、

日本人もまた豊かで幸せに暮らしつつ、尊敬

され、名誉ある地位を占めるというものです。

 

 

自由で開かれたインド太平洋戦略

自由で開かれたインド太平洋戦略の基本

安倍政権が昨年あたりから注力している、

「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは、

そうした「ほとんど確実」な未来を迎える

ための、最重要の「グランド・ストラテジー

(大戦略)」です。

 

そしてそこに「ほとんど確実」な要素が

あるからこそ、米国や英国が日本の大戦略を

そのままの形で採用し、乗っかってきている

というわけです。

 

「不確実」なことに一喜一憂したり、

命の次に大切なカネを投じたりするよりも、

「ほとんど確実」なことに目を向けたほうが、

金銭的にも精神的にもよほど堅実です。

 

繰り返しになりますが、日本政府が

「インド太平洋戦略」に狙いを定め、

外交・経済上の資源を集中投入しているのは、

「ほとんど確実」なチャンスがそこにある

からです。

 

超長期的なスパン(今世紀中盤以降)で

みて、「インド太平洋地域」で何が起きる

かについては、以下の3つが「ほとんど確実」

であるとされています。

 

ひとつは「人口が増え続ける」ことです。

ふたつめは「所得の向上と平準化」です。

最後は「都市への流入」です。

 

これらの「メガトレンド」というのは、

主に「人口動態」に基づくものです。

世の中には様々な予測が提示されていますが、

「最も正確」とされるのが「人口動態」です。

 

したがって上記の「メガトレンド」という

のは、「ほとんど確実」であると判断

されるわけであり、カネもモノこの流れに

沿って動くとされます。

 

冒頭でご紹介した「人口動態」に基づく

「メガトレンド」は、ITやAIといった

「技術革新」が進むかどうかとか、

 

どの個別企業が勝つかどうかとはほとんど

関係なく、「インド太平洋」地域で長期的に

進行するものです。

 

人口が増え続けるとは

日本・中国

まず、一つ目の「トレンド」として、

「人口が増え続ける」ということがあります。

日本は少子高齢化社会に突入しており、

今しばらく人口減少のトレンドが続きます。

 

安倍政権の政策的な努力が身を結べば、

2030年代をメドとして減少には歯止めが

かかり、今世紀いっぱい1億人をキープでき

そうですが、しかし今より国土がスカスカに

なるのは否めません。

 

また、中国と韓国も日本の後を追いかける

形で、2030年あたりから人口減少が

顕著になっていきます。

 

特に中国の少子高齢化は極めて深刻な問題

となり、先日まで続いた「一人っ子政策」

の後遺症に悩まされ、健全な社会を維持

できないとすらされています。

 

中国の高齢化と人口減少は日本をはるかに

上回り、21世紀の終わりには中国の人口は

6億人となり、インドやロシアに対抗

できないという予測もあります。

 

つまり中国の軍事的な膨張戦略というのは、

2030年代を境に沈静化に向かうとも

みられており、

 

これがあるから国力がピークに達する

2020年代に、可能な限り「対外侵出」

をしておきたいと、習政権が焦っている

という観測もあります。

 

その意味では日本としては「ひと安心」

ですが、しかしその一方で中国の国力低下

というのは、日本経済の未来に陰を投げ

かける要素でもあります。

 

インド太平洋地域

日本経済を支える対外貿易は今、米国と

中国の「2本柱体制」になっていますから、

中国の成長速度が鈍るのは困ったことでは

あります。

 

しかし、視点を「インド太平洋地域」まで

広げると、話は全く変わってくることに

なります。

 

中国、韓国、日本以外のほとんどの

国々は、急速な人口増加をずっと

続けていくとみられます。

 

たとえば2050年の時点人口予測では、

中国が13億5千万人と今より約6千万人

減る一方で、

 

インドは17億人と今より約3億6千万人

も増え、人口でもGDPでも中国を圧倒する

とみられています。

 

なお、2050年の米国の人口は今より

7千万人も増え、約3億9千万人に

達するとみられていますし、

 

オーストラリアも現在の2100万人から、

2900万人へと計画的に増えていくと

みられます。

 

たしかに昨今の中国の膨張は脅威ですが、

彼らがやがて日が沈むように縮小していく

のに対し、

 

日本が今、「同盟」、「準・同盟関係」に

ある、米国、インド、オーストリアの

人口の総計は、約4億数千万人も増える

ことが「ほぼ確実」なのです。

 

つまり日本にとって「最も緊密」といえる

国々で、これから一世代(30年あまり)

経ったら、日本が4つ入るくらいの人口

増加が発生するわけです。

 

日本が今後の主要な貿易相手国として、

これら3ヶ国に熱い期待を寄せているのは、

ある意味、当然のことといえますし、

 

安全保障戦略として「日米豪印」の4カ国

による、「アジア安全保障ダイヤモンド」

を提唱して、

 

かなりの程度、成功しつつあるというのは、

相当に理にかなったことといえます。

 

無論、「インド太平洋地域」のなかでは、

日中韓以外、全般的にどの国も人口が

増えます。

主要国の2050年の人口予測をみてみると、

 

  • インドネシア:2億6千万人→3億2千万人
  • フィリピン:1億1千万人→1億5千万人
  • ベトナム:1億人→1億1千万人
  • ミャンマー:5千500万人→6千400万人
  • マレーシア:2100万人→3900万人

 

といずれも高い人口増加が見込まれています。

 

タイのみは日中韓ほどではないものの、

2040年頃には人口の増加がストップし、

そのまま停滞状態になるとみられます。

 

もっとも後述するようにGDPは増える

見通しで、一人あたりの所得レベルも

向上しますから、「国家の成熟度」は

タイも右肩上がりといえます。

 

また、これらの国の人口は将来にわたっても、

ずっと「若い」ことが特徴です。

 

2050年の中位年齢(全人口を2等分

する境界点)は、日本が56歳、韓国が

53歳、中国が49歳となりますが、

 

  • インド:37歳
  • インドネシア:36歳
  • フィリピン:32歳
  • ベトナム:41歳
  • ミャンマー:38歳

 

とみんな「現役バリバリ」の若年世代で

あり、消費も旺盛な「子育て世代」となる

見通しです。(タイのみは50歳と日中韓

並の「成熟」ぶりです)

※上記の人口動態についてのデータは、
国連経済社会情報・政策分析局の『世界人口予測」
及び日本国総務省統計局『世界の統計』を参照

 

これはGDPにもダイレクトに反映されると

みられます。

いわゆる「人口ボーナス」が働くわけです。

 

2050年のGDPのランキングは

以下の通りとされます。

 

  • 1位 中国:58兆5千億ドル(21兆3千億ドル)
  • 2位 インド:44兆1千億ドル(8兆7千億ドル)
  • 3位 米国:34兆1千億ドル(18兆6千億ドル)
  • 4位 インドネシア:10兆5千億ドル(3兆ドル)
  • 19位 フィリピン:3兆3千億ドル(8千億ドル)
  • 20位 ベトナム:3兆1千億ドル(6千億ドル)
  • 24位 マレーシア:2兆8千億ドル(8千億ドル)
  • 25位 タイ:2兆7千億ドル(1兆1千億ドル)

※pwcによる推計。PPP換算
※カッコ内は2016年の数値

 

ちなみに、2050年に古くからの「列強」

諸国の順位は、

 

  • 6位 ロシア:7兆1千億ドル(3兆7千億ドル)
  • 8位 日本:6兆7千億ドル(4兆9千億ドル)
  • 9位 ドイツ:6兆1千億ドル(3兆9千億ドル)
  • 10位 英国:5兆4千億ドル(2兆8千億ドル)
  • 12位 フランス:4兆7千億ドル(2兆7千億ドル)

 

と、ロシア以外は軒並み下落していきます。

人口的にもGDPでみても、また軍事力という

観点でみても、

 

国連の常任理事国を入れ替えようという

動きは、いずれ不可避になるとみられます。

 

日本はギリギリで「列強」の地位は確保

できるものの、新しい常任理事国に入れて

もらえるかどうかは、どうもよくわからなく

なってきています。

 

なお資源国であるカナダやオーストラリアは、

GDPはほぼ2~3倍に激増しますので、

投資対象としては非常に魅力的ではありますが、

 

巨大な人口を有するASEAN諸国と比べると、

GDPのランクは埋没していくとみられています。

 

人口爆発はアフリカや中東でより激しく発生し、

これらの地域の人口は軒並み倍増するとみられ

ますが、国家と社会が「成熟」していく速度と、

 

一人ひとりの所得が増える勢いという点でみれば、

「インド太平洋地域」は他を圧倒していきます。

 

すでに世界中が認めているように、

21世紀の「世界経済の中心」はインド

太平洋であり、「老衰」していくEUからの

離脱を決めた英国が、

 

躍進する「インド太平洋地域」の一員に

なるべく、日本に急接近している理由も

よく理解できます。

 

所得の向上と平準化とは

また、「所得の向上と平準化」というのも、

インド太平洋地域全体の大きなトレンドです。

 

日本では賃金がなかなか向上しませんが、

それはインド太平洋地域全体の労働力と、

ほぼ競合する形になっているからでも

あります。

 

米国の一般的な労働者の賃金が低下して

きたのも、これと全く同じメカニズムと

いえます。

 

同じ財やサービスを生産するのであれば、

賃金が安い方が有利なのは当然ですから、

企業は生産拠点をそちらに移す傾向が

あります。

 

それゆえ先進国では賃金に下げ圧力が

かかり、途上国では逆に賃金が上がって

いくわけです。

 

しかしこれからだんだんと、

その傾向は薄れていくものと思われます。

 

インド太平洋地域全体の所得の水準は、

だんだんと向上し続けているのは間違い

なく、ベンチマークとしてきた先進国の

水準に、次第次第に近付いてきています

 

すでに中国の沿海部やインドの一部では、

先進国を凌駕する賃金水準になりつつ

あります。

 

台湾や韓国の若者たちの生活の水準は、

日本の若者たちとほとんど変わりありま

せんし、

 

東南アジアでみかける普通の人々の姿も、

先進国との違いを感じるものではあり

ません。

 

むしろオーストラリアやシンガポール

などから、日本に遊びに来た友人たちは

一様に、「日本は全てが安い」と驚く

くらいですから、随分と「平準化」が

進んできたものです。

 

今後、インド太平洋地域全体に

日本人と同じような購買力を持ち、

日本人と同じようなモノやサービスを求める、

巨大な「中産階級」が出現しつつあるのです。

 

北米大陸やEUをはるかに凌駕するような、

巨大なマーケットが誕生するわけですから、

日本企業がこの市場を取り込むことに成功

すれば、継続した成長は「ほとんど確実」

といえます。

 

都市の流入とは

最後に日本政府が注目するトレンドは、

今後ずっと進むであろう「都市化」です。

 

1950年代、世界人口の3割が都市に

住み、残りの人々は農村や漁村に住んで

いました。

 

しかし今、世界人口の半分が都市に住んで

います

 

そして2050年には世界人口の3分の

2が、都市の住民になるとされています

 

1950年の世界人口は約25億人

でしたが、現在は約75億人へと激増

しています。

 

2050年の世界人口は約95億人と

みられますが、農村や漁村に住む人口は

あまり変わらないのに対し、

 

都市に、都市にと人々が集まっている

わけです。

 

そして国連はこの巨大なトレンドが、

アジアとアフリカでより顕著になると

予測します。

 

これは凄まじいビジネスチャンスです。

AIなどのIT分野の成長も凄い話ですが、

「都市化」も途方もないほどのカネが動く

です。

 

そして多くの日本企業がこの分野に関して、

「独擅場」ともいえる強みを誇っています

から、いかにこの流れを日本の成長に取り

込むかは、日本の国家的命運を賭ける

ような話といえます。

 

すでに日本政府は本腰を入れて、

「国策」としてこの分野に取り組んでいます。

 

例えば今国会で政府が提出した法案の中に、

「海外インフラ事業への参入促進法案」が

あります。

 

都市再生、鉄道、上下水道、水資源、空港、

港湾など、国内の9つの独立行政法人

束ねた上で、極めて高いレベルにある

 

日本のインフラ事業を、国交大臣が司令塔と

なって海外に売り込むという、かなり野心的な

法案となっています。

 

もっともこれは民主党政権の頃から、

「アジア太平洋地域の成長を取り込む」

として、累次にわたって策定された

「成長戦略」を、より高度かつ戦略的に

再編するものです。

 

実際、この「インフラ輸出」というのは、

想像以上に膨らんでいる産業分野です。

2010年のスタート時には約10兆円

規模でしたが、2015年には約20兆円

の規模に達しており、

 

2020年には約30兆円の産業になると

されます。

 

すでに自動車産業に匹敵するくらいの、

巨大産業に育ちつつあるわけですが、

今後、本格的に「インド太平洋戦略」

が進めば、

 

日本のGDPの2~3割程度をこのインフラ

事業が、継続して叩き出す可能性がある

いえます。

 

また、ODAの枠組を利用して行う

プロジェクトに、日本政府が掲げる

「連結性構想」があります。

 

インド洋と太平洋に広くまたがって、

港湾、鉄道、高速道路、空港など、

30以上もの交通インフラの整備事業が、

日本政府の手ですでに進行している

ところです。

 

この「連結性構想」というのは、

地域においても規模においても、

中国が提唱した「一帯一路」とほぼ同じ

もので、すでに日本が着々と進めてきた

ものなのです。

 

また、先週、日本の官民が一体となって、

ベトナムに「スマート都市」を売り込む

話が、日経新聞の一面を大々的に

飾りました。

 

東京や大阪、名古屋、福岡や札幌みたいな

都市に、自分たちも住んでみたいという

のは、インド太平洋地域の多くの人々の

「憧れ」です。

 

今後、巨大な建設プロジェクトが相次ぎ、

日本列島を何十個も作り変えるくらいの

建設需要が、インド太平洋地域全体で

本格化するとみられますが、

 

日本政府はすでにそこに焦点を合わせて、

本格的な「国策」として取り組みつつある

わけです。

 

まとめ

日本経済の中期トレンドは、少死高齢化

を背景として、厳しいと思われます。

 

一方、長期的な視点に立つと、今後成長が

確実である、インド太平洋地域の発展を

取り込む形で、明るいと考えられます。

 

 

日本政府は長期戦略として、「自由で

開かれたインド太平洋戦略」に取り組ん

でおり、成果も徐々にだしつつあります。

 

上記施策を支える3つのキーワードが

「人口が増え続ける」「所得の向上と

平準化」「都市への流入」です。

 

IT・AIの発展と合せて、今後の展開が

注目されます。