上記記事では、社会保険料全体の基本を

説明しました。

本記事では、国民年金,厚生年金保険に

絞って説明します。

 

先ずは、2005年に始まった保険料金

値上げが2017年で完了することを

説明します。

続いて、今後の支給抑制案に関して説明

します。

 

 

保険料の上限と給付水準の下限を設定した小泉政権

保険料の上限設定と2017年 値上げ完了

厚生年金保険や国民年金などの公的年金は

原則的に、現役世代から徴収した保険料を、

その時点の年金受給者に年金として配分

する、「賦課方式」という仕組みで運営

されています。

 

この賦課方式には欠点があり、それは

少子高齢化の進行によって、現役世代の

人数が減り、年金受給者の人数が増える

場合には、現役世代から徴収する保険

料を値上げしないと、年金制度を維持

できなくなるという点です。

 

またこれを繰り返していくと、少子

高齢化が収まらないかぎり、現役世代

から徴収する保険料は無制限に上昇

していき、生活が苦しくなってしまう

という点です。

 

下図は給付水準や国庫支出などを

全く行わなかった場合の一例を試算

したものです。

各種施策がとても大切だと分ります。

 

 

そこで小泉純一郎政権の時代に法改正が

行われ、現役世代から徴収する保険料に

対して、一定の上限(厚生年金保険は

年収の18.30%」、国民年金は

「月額1万6,900円」)を設定

しました。

 

またその上限に達するまで、厚生年金

保険は毎年9月に0.354%ずつ、国民

年金は毎年4月に280円ずつ、それ

ぞれの保険料を値上げすると決定

しました。

 

 

このようにして2004年から始まった

保険料の値上げは、国民年金は2017年

4月をもって、厚生年金保険は2017年

9月をもって終了することとなりました。

 

値上げ継続へ

しかし国民年金の保険料の値上げは、次の

ような理由により、今後も続いていく

ようで、終了ではありません

 

産前産後の免除 国民年金保険料100円程度値上げ

自営業やフリーランスなどの国民年金の

第1号被保険者は、産前産後の期間中に

ついても、国民年金の保険料を納付する

必要があります。

 

しかし2016年12月に、「公的年金

制度の持続可能性の向上を図るための

国民年金法等の一部を改正する法律」が

成立したため、2019年4月以降は、

この期間に係る保険料を、納付する

必要がなくなります。

 

この法律によると原則として、出産の

予定日の属する月の前月(多胎妊娠の

場合は3か月前)から、出産予定月の

翌々月までの期間に係る保険料が、

納付を免除されます。

 

そうなると免除を受けた方が納付しな

かった保険料を穴埋めする、財源を

確保する必要があります。

 

これについて現在点では、国民年金の

保険料を月額100円程度値上げして、

財源を確保することになっています。

 

こども保険の創設

2017年3月に、自民党の小泉進次郎

衆議院議員らが作る「2020年以降の

経済財政構想小委員会」が、保育や幼児

教育を実質的に無償にするための、

「こども保険」の創設を提言して、

大きな話題になりました。

 

もしこども保険が創設された場合には、厚生

年金保険の保険料は月0.1%、国民年金の

保険料は月160円くらい値上げされ、その

値上げ分により未就学児への児童手当を、

月額5,000円増額するそうです。

 

この後は段階的に、厚生年金保険の保険料は

月0.5%、国民年金の保険料は月830円

くらいまで値上げされ、その値上げ分により

未就学児への児童手当を、月2万5,000円

増額するそうです。

 

給付水準の下限を設定

その上限まで保険料を値上げしても、

年金財政が厳しい見通しの場合には、

今度は年金額の方を減額して、年金

制度が破綻しないようにしました

 

ただ年金額の減額を繰り返していくと、

今度は年金受給者の生活が苦しくなって

しまいます。

 

そこで、例えば老齢年金の給付水準は、

受給を始める時点において、現役サラリー

ン世帯の平均所得の50%を維持しな

ければならないという、給付水準の下限を

設定しました

 

給付水準「所得代替率」とよばれて

おり、「現役男子の手取り収入との比率」

を表します。

 

厚生労働省では、年金の財政については

5年に一度、検証結果を発表しています。

最新の検証は2014年9月に公開

されています。

 

この検証は一人ではなく、夫婦単位の

モデルで計算されています。

夫が40年間厚生年金のある会社で働き、

妻は専業主婦で国民年金を40年間納付

しているという前提です。

 

2014年では、夫婦で貰える年金額が

21.8万円で、その所得代替率は62.7

%にあたります。

今後の支給抑制案

以下が今後必要な主な改革案です。

 

  • マクロ経済スライドのフル発動
  • 厚生年金の適用拡大(第1・3号被保険者の縮小)
  • 受給開始年齢の引き上げ
  • 被保険者期間の延長
  • 高所得者への国庫負担分を減額

 

マクロ経済スライドのフル発動

1.マクロ経済スライドについて、年金の

名目額が前年度を下回らない措置を維持

しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で前年

度までの未調整分を含めて調整する。

【2018年4月施行】

 

2.賃金・物価スライドについて、支え手

である現役世代の負担能力に応じた給付

とする観点から、賃金変動が物価変動を

下回る場合には賃金変動に合わせて改定

する考え方を徹底する。

【2021年年4月施行】

 

 

1.はあまりにも景気が悪い時は高齢世代

に配慮して減額を減らしますが、景気

回復期にはちゃんと回収する内容です。

これは、高齢者への配慮から来ています。

 

2.は、現状は実質年金額をキープする

ために物価・賃金が上がった時には年金

支給額を増やし、物価が下がった時には

年金支給額も減らしていますが、今回の

改正によって賃金が下がった場合にも

年金支給額を減らすというものです。

 

この背景には、賃金スライドの徹底は給付

額をカットするものであるものの、そもそも

給付額が高止まりしています。

 

主に政治的な理由で、2004年以降、

マクロ経済スライドが発動されたのは

2015年のみです。

これにより、9兆円以上も過払いをして

いた事実があります。

 

厚生年金の適用拡大(第1・3号被保険者の縮小)

本件はは2016年10月から501人以上の

企業において実施されています。

 

短時間労働者(非正規雇用)の厚生年金への

適用拡大を500人以下の企業にも労使合意に

基づき拡大させるというものです。

 

  • 週20時間以上
  • 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  • 勤務期間1年以上見込み
  • 学生は適用除外

 

これは、配偶者の扶養の問題にも絡んでおり、

詳しくは下記記事をご覧下さい。

 

 

受給開始年齢の引き上げ

老齢基礎年金を2001年から2年ステップで

10年かけて60才から65才に引き上げ

ました。

続いて、老齢厚生年金を2年ステップで10年

かけて60才から65才に引き上げています。

 

年金は国の根幹施策ですから、20年という

時間を掛けて、慎重に行っており、現在進行

中です。

 

また老齢厚生年金を後に回したのは、60才

から65才の雇用延長制度の国内での浸透を

待つためです。

 

また、65才までの引き上げが完了する

2021年以降は、同様のペースで引き

上げが継続されることが想定されます。

詳しくは下記記事をご覧下さい。

 

 

 

被保険者期間の延長

受給開始年齢の引き上げ雇用保障は

セットです。

一方、現状として2015年で65才以上で

働いている高齢者の数は過去最多770万人

となっています。

 

前年より38万人増加し、依然として働く

高齢者の数が増えているという現状が

明らかになっています。

また雇用条件は非正規雇用が主力と

なっています。

 

現在は法整備が、実状に追いついていない

状況です。

ここで65才から年金支給開始年齢を

引き上げるとなると、下地つくりが

必要になります。

 

ここで難しいのが、65才なら一定の

健康状態が見込めますが、それを過ぎ

るとパートナーを含めた、健康不安の

問題が浮上してきます。

 

介護をしながら働く、健康状態に応じて

仕事を変える等の、柔軟な働き方に対応

する必要があります。

 

そこに対応しようとするのが、高年齢

求職者給付金改正です。

高年齢求職者給付金は高齢者版失業手当

といわれています。

詳しくは下記記事をご覧下さい。

 

 

高所得者への国庫負担分を減額

「加入している年金の種類」「年齢

(65才以上かどうか)」によって差が

あります。

また、国民年金のみご加入の方は、いくら

働いても年金の減額・停止はありません。

 

65才以上の場合、基本月額=老齢厚生年金

÷12ヶ月をまづ算出して下さい。

この際、老齢基礎年金、経過的加算額、加給

年金額は除いて下さい。

 

基礎金額が47万円を超えると、年金が減額

されます。

 

参考:GPIF運用を不安に感じている方に

2015年にGPIFの年金運用で何兆円も

損失が出たとニュースを見て驚いた方も

多いのではないでしょうか。

 

当時の民進党は党独自の試算として、

2015年度の損失が約4兆7000億

円に上ると発表し、「第2の消えた年金

問題」と与党を追求しました。

 

しかし、そもそも年金支給は保険料と国庫

負担金でほとんど全てをまかなっており、

積立金は収支を微調整しているに過ぎ

ません。

 

実際のところ、給付額に占める積立金の

割合は1割程度で、極端な例として、年金

運用額約135兆円が全額なくなっても、

年金制度が破綻するわけではありません。

 

加えて、後に発表があった通り、2016

年度第2四半期(7-9月)の収益率は、

プラス1.84%で、収益額は2兆3,746

億円の利益を出しいます。

 

株式運用の比率が高まっていますので、短期

的に見ても意味がないことは明白と思われます。

また、長期的に見ても42兆5,644億円の

プラスとなっています。

 

過去5年の実質的な運用利回り(運用利回りー

賃金上昇率)の平均は5.4%、同10年だと

2.85%で好成績となっています。

 

 

まとめ

小泉純一郎政権の時代に法改正が

行われ、現役世代から徴収する保険料に

対して、一定の上限(厚生年金保険は

年収の18.30%」、国民年金は

「月額1万6,900円」)を設定

しました。

 

法改正によって2004年から始まった

保険料の値上げは、国民年金は2017年

4月をもって、厚生年金保険は2017年

9月をもって終了することとなりました。

 

上限まで保険料を値上げしても、

年金財政が厳しい見通しの場合には、

今度は年金額の方を減額して、年金

制度が破綻しないようにしました

 

以下が今後必要な主な改革案です。

  • マクロ経済スライドのフル発動
  • 厚生年金の適用拡大(第1・3号被保険者の縮小)
  • 受給開始年齢の引き上げ
  • 被保険者期間の延長
  • 高所得者への国庫負担分を減額

 

記事中の引用記事例からも分るように、

社会保険,雇用対策等は密接に関係

しています。

全体として理解することが大切です。